高所恐怖症

高所恐怖症というのは、恐怖症の中でも特によく耳にする言葉です。実際にはあまりにも普通に日常会話の中で使われており、高いところが苦手、という程度でも使うことが多いため、本当に身体的症状を伴うような高所恐怖症の人はそこまで多くはないのかもしれません。たとえば、吊り橋やビルの屋上、ジェットコースターなど、極端に高い場所に行くと足がすくんだりめまいがするというのは、高所恐怖症です。一方、ジェットコースターは乗れるけど、脚立に上るのは怖いという人もいます。また、飛行機は乗れるけどジェットコースターは無理という人もいて、高所恐怖症だからといって高ければ高いほど恐怖を感じるわけではなさそうです。

高所恐怖症の場合、過去の体験がトラウマになったというケースはほとんどありません。昔吊り橋からまっさかさまに落ちた経験で高所恐怖症になったというのは聞いたことがないでしょう。そんな体験をしていては、命に関わるからです。高所恐怖症を生むのは、経験ではなく想像です。落ちたらどうしよう、落ちるんじゃないかという想像が恐怖をかきたてて、症状が現れます。そのため、高所恐怖症でも多くの人は高層ホテルの最上階のレストランで食事を楽しむことはできます。そこから地上に落下するイメージがないからです。また、飛行機も載ってしまえば窓はあるものの、完全に密封された空間であるため高所というイメージはやや薄れます。ところが吊り橋やビルの屋上などは、そこから落ちることが容易にイメージできるため、恐怖を感じやすいのです。

ただし、高所恐怖症の場合、恐怖が永遠に続くことはありません。怖いと思っていても、脳の働きによって10分程度でその状況に慣れ、恐怖が薄らいでくることがわかっています。そのため、吊り橋の上を行けるところまで行って立ち止まり、怖くなくなるまで待ってから引き換えし、またチャレンジするということを繰り返すと徐々に遠くまで行けるようになり、多くの人は吊り橋の中央までいけるようになるという実験を以前NHKが行って話題にもなりましたが、ある程度「慣れる」ことが高所恐怖症克服のカギになります。とはいえ、こうした実験や治療は専門の医師などの指導の下におこなっているので、素人が克服のために無理な状況でチャレンジするのはおすすめできません。

↑ PAGE TOP